将棋の「ABEMAトーナメント」のどこに魅力を感じているかの話

毎週土曜の19時からABEMAの将棋チャンネルではABEMAトーナメントが放送されているが、ここ4年そこそこ欠かさず見ている番組になっている。

 

大会の内容をざっくり言うと、プロ棋士3人でチームを組み、15チームが5リーグに分かれて予選を戦い、各リーグ上位2チームが勝ち上がって本戦トーナメントを争い、優勝を決める大会だ。
持ち時間5分、1手指す毎に5秒加算されるチェスのフィッシャールールが採用されており、一人最大3局、先に5勝したチームの勝ちという内容となっている。

去年までは本戦は17時から生放送だったが、今年の開催では本戦も収録放送となり、19時開始となったようだ。

 

いわゆるプロの戦績(何勝何敗)に含まれない非公式戦だが、優勝賞金は1000万円とタイトル戦並。
今回はどんなところがこの棋戦の魅力と感じているかを書いてみたい。

 


■持ち時間が極端に短い超早指し戦

 

基本的にプロの棋戦では持ち時間が4時間や6時間など、長いものが多い。
NHK杯JT杯など短い棋戦も存在するが、それらとは比較にならない程この大会のルールは持ち時間が短い。
仮に100手で決着が付いたとして約19分、予選は収録のため合間合間の解説や控室映像で若干時間が伸びるが、それにしてもスピーディに決着まで進む。
難しい局面でもせいぜい1~2分しか悩む時間がないわけで、結果としてじっと見ていても飽きないエンターテイメント性の高い映像コンテンツになっている。

 


棋士が自ら対局時計を叩く

 

この棋戦では対局者が自ら対局時計のボタンを押すルールになっている。
プロの将棋では基本的に記録係が機器を操作して時間が進むので、アマチュアや修行時代の頃のように自分で時計を叩いているプロの姿を見られる事が魅力となっており、前述のように持ち時間の短さも相まって1秒以内でお互いの指し手が続く時などは漫画の「ハチワンダイバー」のような「バチダン」が見られ、見ていて熱くなる。

 


■珍しい「チーム戦」というコンセプト

 

ABEMAトーナメントは今回で7大会目となっており、初期2大会は個人戦だったが、第3回大会から3人のチーム戦に変更されている。
企画としてこれが当たっており、大会前のドラフト会議や、チーム動画、対局中の控室動画など、チーム戦ならではのコンテンツ提供が行われている。
対局自体は1対1で行われるのでその点では通常の棋戦と同様だが、色々な組み合わせが実現して見る者を楽しませてくれるし、チームの勝利がかかったフルセットの決着局などは緊張感もある。

 


■「エントリーチーム」の存在

 

全15チーム中1チームはドラフトされなかったエントリー棋士の予選トーナメントによる勝ち抜けで結成される仕組みで、これもまた毎大会でドラマを生む要素になっている。
今大会では郷田九段、行方九段という羽生世代の2人がエントリーチームに入り、同リーグで佐藤康光九段、森内九段といった同じく羽生世代と対局することになり、実際期待通りの熱戦を見ることができた。
また、もう1人チーム入りした古賀五段はフリークラスからC級2組を1期抜けした俊英で、羽生世代の2人とは30歳も歳が離れていたが控室では屈託なく話していて、ベテランに可愛がられつつ将棋の強さは認められていたのも大変好印象だった。

 


■解説の妙技が楽しめる(早見え、実況風etc)

 

私は将棋の中継は解説が付いていないと見られないのだが、ABEMAトーナメントは全試合解説が付いており、また超早指し戦の解説とあって、各解説の棋士および女流棋士も腕と独自色の見せ所になっている。
この大会の解説を聞いていると、指しているところを見る以上にプロ棋士の凄さを感じるかもしれない。

 


■終わりに

 

2023年度の今大会は現在予選A~Dリーグまでが終了し、今週からEリーグがスタートするといった段階だ。
Eリーグはチーム藤井、チーム渡辺、チーム千田で構成されている。
今年で初めてリーダーとして参戦する千田七段のチームには前回大会で力を見せた西田五段もおり、プロ最年少の藤本四段もいるため大変注目している。
千田七段はチームTwitterアカウントでも超積極的な情報発信に貢献していて、サプライズで個人賞を出してもらえないかと期待している。

 

 


以上です。