小河邸の約束2022のライブ録音ミックス作業を終えました

去る2022年11月27日、2012年から年1回開催してきた小河邸の約束の最終回となる第9回があり、天候良好、演者・音響スタッフおよびボランティアスタッフ全力で、良い演奏会をお届けすることができた。
今回はアンコール含め全14曲を披露した。
(2020、2021年は新型コロナウイルス情勢下の配慮のため開催見送り)

毎回samlieがライブの録音を取りまとめてミックスしているのだが、最終回ということと、今回は明らかに今までと作業の質(と量)が違うので記録としてメモを残しておくことにした。


■1.素材の用意


今回音響スタッフ用意のミキサーがMIDAS M32 LIVEでパラ録りが可能なため、録音をお願いし、データを渡してもらった。


例年はミキサーからは2chミックス音源をもらい、個別の音は可能な範囲でポータブルレコーダーで録音したものを重ねて音量が欲しいところで使うといったミックスを行ってきたので、今回は初めてマルチトラック録音からミックスという工程を行えることになった。

32ch分のモノラルwavファイルが2時間弱のライブ1本分、これが今回のミックス対象となる。

 

■2.DAWへの取り込み


ミックス作業には普段作曲に用いているLogic Proを使用した。

いきなりだが、今回の苦労の9割は取り込み段階で発生した。
受け取ったファイルはwavファイルで、wavファイルは仕様上4GBが条件となるため、録音を行うデバイス側では長時間の連続的な録音時、ファイルは分割して生成される。
今回受け取ったファイルは32ch分のマルチチャンネルオーディオファイルで、合計の容量は80GB程度になった。
前回のライブのミックスを行ったLogicのプロジェクトファイルが12GB程度で、今回は色々足して90GBを超えたので、この分量差でまず圧倒された。
マルチチャンネルオーディオファイルは人生で初めて扱ったので不安はあったが、幸いLogic Proへの取り込みは通常のD&Dで直感的に行うことができたので、この時点では割りと取り込みは早く終わるように思えた。

しかし大変だったのはここからで、Logic Proには分割して録音されたwavファイルを時間軸的に連続して読み込む方法が見当たらず、1ファイル取り込むごとに、拡大表示して手動で位置合わせ、再生してつなぎ目に違和感が無いかを確認する、という作業を20ファイル程度行う必要が出て、結果として休日1日潰れる作業量になった。
(ファイルごとに取り込み待ち時間も発生するため、取り込み開始してサーモンランを1マッチして、取り込み完了したら位置合わせして次のファイルを取り込んでサーモンランを1マッチして、という繰り返しでクマサン印のワイパーを大量に振り回す日にもなった)


ここまでの作業を12/3~12/4の週末で終え、まずはライブ1本分を連続的に再生可能な状態となった。


■3.パンニング(定位調整)、大まかな音量調整


ここからが楽しい音楽の時間で、各ボーカルや楽器のぶつかりを抑えたり広がりを持たせるために定位を設定し、各チャンネルの音量を調整して大きすぎ小さすぎの違和感を消していく。
全体を通した大雑把な調整段階とはいえ、ごちゃまぜの団子状態だった音が徐々に綺麗に、音楽になっていくので充実感がある。
会場のエアの音(拍手等)との音量バランスの調整もこの段階で行う。
チャンネル数が多いので、LRで録っているキーボードや電子ドラム等のチャンネルは予めグループ化しておき、後に来る細かい調整の作業に備えた。

 

ここまでの作業を12/10~12/11の週末で終えた。

 

■4.曲ごと、シーンごとに合わせた細かい調整


ひたすら地味で面倒な作業の連続で、各楽器やボーカルの見せ場やソロの音量や空間系エフェクトを、曲ごとに調整、追加していく。

小河邸の約束ではボーカル5人が入れ代わり立ち代わりリードボーカルを取る。そのため画一的な音量調整は難しく、場面場面で音量の上げ下げを行っていった。

 

■5.マスタリング


2chのwavファイルとして出力後、全体的なEQ、レベル調整を行う。


ここまでの作業を12/17~12/19で終え、小河邸の約束2022ライブ録音のミックスは完了となった。

 


小河邸の約束公演終了後の定番の流れとして、自分が音声部分のミックスを終えたあとで動画編集を行う弟に引き渡し、最終的に動画作品として完成して、年明け後の新年会でメンバー内で鑑賞される。
(自分は遠方のため参加したことはない)


それとは別に、出来上がった1本の長いwavファイルから曲単体の切り出しを行って曲別のwavファイルを作成し、mp3ファイルに変換してdropboxにアップロードしてメンバーに共有している。
これはメンバーの観賞用であると同時に、自分の観賞用でもある。
これも毎年行ってきた作業で、これを完了して初めて、自分のライブに係わる全作業が終了となる。

今回はこれまでとは段違いに完成度が高いミックスになりメンバー間でも好評で、苦労が報われた気持ちだ。


今後の人生で32ch分のマルチチャンネルオーディオファイルを触る機会はまず生じないと思うが、次に同様の機会がある際は、Logic Proが4GBごとに分割されたwavファイルを自動でいい感じに繋げて読み込んでくれる機能を持っていてくれると嬉しい。

 

以上です。